少年探偵団 神原克收 | |
今回からブータン便りをお届けします。 12月13日からチェンマイへ行きますので、それまでに終わらせるため2日に一回くらいのペースでお届けします。 |
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目 次 (項目をクリックすると開きます) | |
1 | ブータンは美しく変わった国である。 |
2 | 建物の美しさ |
3 | 民族衣装 |
4 | 豊かさの証明、犬が多い |
5 | スローライフの実践 |
6 | 日本が失ったもの |
7 | ブータン旅行は高くつく |
1.ブータンは美しく変わった国である | |
世界のシャングリラ(桃源郷)と言われるのもむべなるかなの美しさで 何がそんなに美しいのか? @まづ国の人口60万人(100万人と書いている本もある)首都ティンプー の人口45,000人という規模 からくるのどかさA伝統様式に則った建物や家々 B殆どの人々が着ている美しい民族衣装 C山また山の豊かな自然これらが混然一体となって何とも言えない 魅 力を醸し出している 2.次にブータンのどこが変わっているのか? @35年くらい前までは鎖国していた。 ( 首都ブーティンの町並み) A貧しい国だが急激な経済発展は望まない 国の主たる目標はGDP ではなくGDH、HはハッピネスのHである。余談だが昭和天皇大葬の際活発な喪服 外 交が展開されたが、その際発展途上国で日本政府に援助を要請しなかったのは唯一ブータンのみ。 B全ての建物・家は伝統様式に則って建てることを義務付け。 5階以上の建物は禁止、エレベーター・エスカレーターも設置禁止と聞いた。しかし禁止の真偽の程は定かではないがどこにも無かったのは事実。 C十数年前まで物々交換が主流であった。今でも地方では物々交換が生きているところがあるらし い。 3.その他ブータンの紹介をもう少々 @国土の面積は九州の1.1倍 A政治は立憲君主制、王様は世襲制で日本と同じ Bネパール語はゾンカと言うが学校では英語で授業をする。 ゾンカは「国語の時間」に勉強する。 C貨幣はニュルタムでレートはインドルピーと全く同じ。 インドルピーはブータンでは使えるが逆はダメ。 ニュルタムを使っていてもルピーと言っている人もいる。 ことほど左様にインドの影響が強烈。 D宗教は大乗仏教。 インドの影響はネパール・ブータンともに強大だが、ネパールはヒンドゥ教に染まり、ブータンは仏教のまま残った。 以上ブータンの概要がお分かり頂けただろうか?次回から各論をもう少し詳しくご紹介したい。 |
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2 建物の美しさ |
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ブータンの空港を降り立って目を見張るものがある。 空港ビルである。おとぎの国を訪れたような錯覚に囚われる。 この驚きは空港だけでなくどこまで行っても感嘆の連続である。 何が美しいのか?まづ色。平安神宮のような華やかさよりもう少し落ち着いた感じで主体は赤が中心。壁の白と窓廻りの華やかな色の組み合わせが何とも言えぬコントラストを作り出している。 次に建物の形状。やや中国の影響が感じられるが、やはり ブータン独特のものである。後で聞いて分ったことだが建物の形状や窓の形は仏教様式で統一されているとのこと。 仏教様式が何であるかは門外漢なので説明は省略するがとにかく美しい。 ブータンで最も大きな建物は「ゾン(城)」という政庁兼仏教本部を兼ねたような建物である。次に大きいのが空港ビルであろうか。これらの建物の存在感は圧倒的な迫力であるが、どんなに大きくても高さは5階建て以下に制限されているので圧迫感はない。 このような大きな建物だけでなく民家も仏教様式の形状と色使いが義務付けられている。同じ様式・色で統一された建物と家が何とも言えない美しさを醸し出している。 驚いたことにどんな大きな建物でも釘は一本も使われていない。 昔の日本の建物も釘は使ってないと思うが、それが今日でも継承されているのは驚きである。 更に驚くことは設計図は全く無いということだ。全て伝承のみで建築されている。そう言えば日本でも 20年位前までは大工さんがベニヤ板に簡単な図面を描いただけで家を建てていた。 家の屋根は昔は木製だったらしいが今は金属製になっており色は赤が多い。この屋根の赤も遠くから眺めると誠に美しい。 しかし、もしこの屋根を全て日本の瓦に置き換えたらもっと美しい景観を作り出すであろう。トタン屋根は遠くから見ると美しいが近くから見ると日本瓦には遠く及ばない。日本ではせっかく「瓦」という立派な武器を持ちながら経済性だけでそれを放棄している。もう昔の町家の美しさを取り戻すことは出来ないのであろうか? |
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3 民族衣装 | |
ブータンでは男も女も、老いも若きも皆んな民族衣装を着ている。最初は少々色が違うくらいでどれも同じ様に見えるが、よく見ると夫々個性の違いが見えてくる。 この民族衣装が何とも言えない美しさを醸し出している。 ものの本によるとブータン人は着道楽なのだそうだ。 確かにお店で見ても凝ろうと思えばいくらでも凝れる品数が用意されている。彼等の収入からすると結構高価なものが置いてあるのは旅行者向けなのか? 「ゴ」 をまとった男性 → ← 「キラ」をまとった女学生 でも旅行者がブータンの民族衣装をそんなに買うとも思えないので、やはり地元民が買うのであろう。と言うことはそれなりに豊かな生活をしているのか、無理して着道楽に走っているのだろうか。 民族衣装の名前は男物が「ゴ」、女物が「キラ」 「ゴ」は日本の丹前に実によく似ている。長めの丹前を膝上までたくし上げケラという5cm幅の帯で締める。そうすると懐がだぶだぶで格好の荷物入れになる。昔は仕事用の斧、銀製の小箱2ケ、布で包んだ木椀などを常時懐に入れて持ち歩いたらしい。 現在でも小刀(小型の鉈に近い)は必需品で常時持ち歩いている。弁当も竹篭に入れて懐に持ち歩く。その他何でも入る誠に便利な懐である。 でも旅行者がブータンの民族衣装をそんなに買うとも思えないので、やはり地元民が買うのであろう。と言うことはそれなりに豊かな生活をしているのか、無理して着道楽に走っているのだろうか。 「キラ」の試着 女性は裾まであるスリップを着け、袖長のブラウスを着る。 長方形の布で出来たキラを両肩で前後をブローチで止めながら体に巻くようにして着る。 その上に長方形の布で出来たキラを両肩で前後をブローチで止めながら体に巻くようにして着る。 「カムニ」を着用したガイ |
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4 豊かさの証明・犬が多い | |
タイも犬は多いがブータンはもっと多い。両国とも仏教国なので殺生をしないから救われているのであろう。では餌は誰が与えるのか?その前に飼いいるのか? 答えは殆どが野良犬、餌は近所の人達が与えるのとゴミなどを漁って食べる。殺生しなければ餌がある限り増え続けるのは道理である。嘘か真かは定かではないが中国なら人間に食べられてしまうから、こんなにはいない。 以前にも触れたがブータンではGDPよりGDH(GrossDomestic Happiness)を優先するし、またこれと言った産業も見当たらないのでそれほど豊かとは思えない。給料水準(1万円/月くらい)や見た目から判断してもネパールよりやや貧しいのではないか。 にも拘わらずこの国で物乞いする人やみやげ物を押し売りする人は全く見掛けない。食料も豊富で飢餓で苦しんでいる話など欠片もない。 山ばかりで農地は猫の額ほどしかないし、畜産も自給自足に毛が生えたくらいのもの。観光は大きな収入源だろうが、これとても政府が急激な観光客の増加は望まない方針なので多くは期待出来ないであろう。 他にこれと言った産業もないにも拘わらず、物乞いもいない、飢えとは無縁、やたらと多い犬を養えるのは国民が豊かではないながらも少なくとも食べ物で困っていることはないのであろう。因みに病院や学校は全て無料とのことである。 ところでこれだけ犬が多いと怖くないのか?地元民は怖くないと言っているが観光客にとっては結構厄介な存在である。 よく吠えて気持ち悪いし、滞在中2度犬に咬まれ人を目撃した。 因みにタイでは延べ4ヶ月以上滞在して一度も咬まれた現場は目撃していない。 いくら政府が急激な発展は望まないと言っても将来観光産業を大きな柱に育てなければならない。そのとき犬が大きなネックになるのは必定。今から手を打つべきだが私が見た限り、誰もそれを認識している風には見えなかった。 |
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5 スローライフの実践 | |
最近日本でもスローライフという言葉が流行っている。 正確な意味はよく分からないが、リタイアした人達に余りあくせくせずにじっくりとした余生を楽しもうという提言かと思う。 その意味であればブータンはまさにスローライフを真に実践している国ではないだろうか。 @車が少ないので少々の距離であれば歩くのが当り前。2〜3Kmなら当 然として場合によっては10Kmくらいでも平気で歩くそうだ。 Aエレベーター・エスカレーターなし。 Bケイタイ電話もあるのかどうかは知らないが、少なくとも滞在中一度 も使っている現場に遭遇しなかった。 C乾燥チーズをスローライフの例として挙げるのは適当かどうか疑わし いが、せっかちな日本人では絶対に普及しない代物であろう。 乾燥チーズはヤクのチーズを文字通り乾燥させたもので、保存可能で 貴重な蛋白源である。これをおやつ代わりに大人も子供もよく食べる。 私も試しに食べてみたが、無味無臭ですごく固くとても噛めた代物で はない。口の中でしゃぶりながら少しずつ溶かしていくのだが、小さ な欠片を完全に食べ終えるのに約2時間掛かった。 D日本で車に乗っていて片道1車線の追越不可の道路では前に遅い車がいると、ついイライラする。遅い車も簡単には道を譲ろうとしない。 ところがブータンでは必ず遅い車は端によって後続の車を先に行かす。 車が少ないから出来るのかも分らないが気持ちの良いマナーである。 まさに「狭いブータン、そんなに急いでどこへ行く」を地で行っている。 ネパールやインドの忙しない人々と比較するとここブータンの時間は実にゆったりと流れていく。豊かな自然、きれいな水、すんだ空気、仏教国特有の柔和な国民性、まさにスローライフの見本を見た思いであった。 |
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6 日本が失ったもの | |
Folk Heritage Musiumというところへ行った。 民衆が残した遺産の展示館というくらいの意味だろう。 一般的に使われていた道具類、農機具や生活用品、おもちゃ等が展示されているこじんまりした展示館である。 ここに展示されているものの約8割は私の子供時代の家にあった懐かしいものばかりである。日本では既に博物館でしか見ることが出来ないが、ブータンでは今でも使っているものも沢山あるとのことである。 日本の文化は中国から朝鮮半島を経て伝わったとされている。 ブータンやネパールの田舎で日本の昔と同じものが残っているのはこれらの国々も日本同様中国からの文化が伝播したのであろうか? 話は変わるが私は子供時代、備後地方の片田舎で育った。大変貧しかったが、心温かい近隣の人々がいてお互いに貧しいながらも助け合って暮らした平和な日々であった。犯罪などは殆ど発生したことがなく、従って玄関に鍵をかけているいる家など皆無であった。長幼の序は守られ、倹約と謙譲を美徳とし、今から思うと儒教の影響が色濃く残っていたように思う。 その後経済が奇跡的な発展を遂げ大変豊かになった。しかし発展と軌をいつにするように日本人が持っていた美点は次第に消えていき、今日みるような物騒で、拝金主義のギスギスした世の中になってしまった。 ブータンに昔懐かしい農機具や生活用具が残っているだけでなく、日本が失った美しい心が今もブータンには息づいているように感じた。ブータンが気に入った最大の理由である。 |
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7 ブータン旅行は高くつく | |
どこの国でも個人旅行は出来る。航空券とホテルを予約すれば可能である。但しブータンではそれは出来ない。ブータン旅行をしようとすれば政府指定の旅行代理店が用意するパッケージを買わなければならない。これを買わなければ航空券が買えない仕組みになっている。 パッケージの中身はホテル・食事・運転手付きの車・ガイド(基本は英語、偶に日本語ガイドもいる)である。 従ってブータン国内を気楽な一人旅としゃれ込むことは不可能で必ずガイドが付く。 価格は一人旅なら$240/日、二人旅なら$230/日、団体で$200/日。私達は最終日は早朝7時半のフライトでネパールへ移動したが、それでもきっちり1日分取られた。 ホテルは日本の場末のビジネスホテルみたいなものから、リゾートホテルなみまで色々とある。更には農家でのホームステイも選択できる。驚くべきはどのホテルに泊まろうが、どこへ行こうが料金は均一。 ブータン便り6で述べたように私はブータンが大変気に入っている。しかし再度ブータンへ旅するかと尋ねられたら、今のシステムが続く限り「ノー」と言わざるを得ない。料金が高いだけでなく、1人でゆっくり見て回ろうとしても必ずガイドはついてくる。自由には歩き回れないからである。 ただもう一度だけ行きたいと思うことがある。それはトレッキングである。行き先・期間の選択肢は沢山あるが、1週間くらいかけてヒマラヤの中腹まで行けたらと思う。その場合2人で行くとすれば馬15頭、人夫5名とガイドを引き連れての旅になる。このトレッキングでも一切合財含めて1日$230である。こんな贅沢を一度は経験してみたいとは思いませんか? どなたかご一緒にチャレンジしませんか? |