エーベルタスマン観光

2007年10月〜12月
松木 勉・和子


    年10月から12月にかけてのニュージーランド旅行中の1日、南島北部のエーベルタスマン国立公園の観光に行った。 前日ウェリントンからフェリーでピクトンに着き、明るい町ネルソンを通ってエーベルタスマン観光の拠点の一つであるモトゥエカに入ってユースホステルにチェックインしたら、そのユースのおばさんが「何か予定があるの?」と聞くので「観光で来た」と答えたら「いいツアーがある」と言う。 特に決めた予定も無いので任せることにしたら早速どこかに電話をして予約を取ってくれた。 どうやら観光ボートで北の岬近くまで行って帰りに途中でどこかのビーチで降りてそこから2時間半ほどのウォーキングをして次のビーチでボートに拾ってもらって帰ってくるというホテル送迎付きの1日ツアーらしい。
早速1人分NZ$60也を払ったら何だか一杯説明してくれたが、要するに「明日朝8時に迎えが来るので、弁当と飲み物を用意してウォーキングのできる服装で玄関で待ってなさい」ということらしい。


    朝言われた通りに待っていたら8時過ぎにマイクロバスが来て運転してきた若い兄ちゃんが「グッドモーニング」と言ったあと「あんたの名前は何て発音するの?」と聞く。 どうやら私の名前のローマ字綴りが発音しにくいらしい。 「マ、ツ、キ」だと区切って教えてやったのに「マチュキ?」「マジュキ?」と2−3度ブツブツ言っていた。 ユースのおばちゃんはどんな綴りを教えたんだろう。

バスの先客は若者が一人と7〜8歳の男の子を連れたお母さんの3人。 我々2人が乗り込むとすぐに出発。 次のホテルに寄って10人程のお客さんを追加して満員となりボートの出るカイテリテリに向かって出発。 この兄ちゃんがサービス精神旺盛なのか途中バスを停めてはあっちを見ろこっちを見ろと言っていろいろ説明してくれるのだがそのキーウイイングリッシュが全く判らない。 と思ったのは我々だけで他のお客さんは皆理解しているらしくドイツ人の老夫婦もフランス人らしい太ったおばさんおじさん3人連れも説明にフンフンと頷いたり兄ちゃんの冗談にキャッキャッと笑っている。 「何や、判れへんのはわしら2人だけやないか」と奥さんと2人「何かゴールデンキーウイがどうしたとか言うてるで」、「ブドウ栽培も増えておいしいワインを造っているとか言うてるのと違う?」とかひそひそと話していました。 
そんな説明の停車を2−3回して最後には「今日のツアーを楽しもうぜ!」とでも言ったらしく皆「イェ〜イ!」と反応している。 こっちはそれも判らないから「イェ〜イ!」にも参加できなかったが、そんなことにはお構いなくバスは8時半にカイテリテリに到着。


   あ船に乗るぞと思ったけど桟橋も無ければ浜にはボートも居ない。 するとさっきの兄ちゃんが現れて皆に向かってベラベラベラと何か長いことしゃべった。 最初は聞いていたけどやっぱり何も判らないから「一緒に来た人にくっついていたらええわ」と途中からええ加減に聞いていたら兄ちゃんの話が終ったら他の人達は三々五々散らばりだした。 「えっ、皆さんどこへ行くの」と驚いたが皆さんが当てにならないなら出発時間だけは確認しとかないとあかんと思って、行きかけた兄ちゃんを慌ててつかまえて「Here, nine o’clockね?」と得意の東南アジア仕込みの漢字カナ交り文ならぬ英単語カナ交り文で尋ねたら、この超簡単英語でも通じたらしく「イエス、ナインオクロック」と答えてくれた。と、ここで会話にもならぬ会話が終っておれば「やっぱり9時出発でここで待ってたらええねん」と安心できたのに、兄ちゃんは続けてあっちこっちを指差しながらベラベラッとしゃべって最後に「OK?」と言って行ってしまった。 最後の「OK?」だけは判ったけど肝心の本文が判らない。 「あっちこっち指差してたけど9時にどうしろと言うねん?」と奥さんと顔を見合わせたけど奥さんにも判る筈もなく2人とも「???」。 仕方なく取敢えずトイレにだけは行っておくことにして後は2人ともその場を動かずに待ってました。
そしたら9時ちょっと前になって沖に停まっていたボートの一隻が浜辺に近づいて、象の鼻よろしく船首に二つに畳んだタラップを伸ばして浜辺に着けてくれた。「ああ、これや。このボートや」ということでじっと待っていた特権で?まっ先に乗り込んだらドイツ人夫妻もフランス人三人組も次々乗ってきてカイテリテリからの乗客も加えてすぐに出発。 例の兄ちゃんも乗っていて船長のアシスタントできびきびと働いている。 ボートを浜辺に着けるのだが砂に乗り上げるようなことを避けるためか来るのも早いし出るのも早い。 「それで時間ぎりぎりまでボートが居なかったんや」と変に納得。


    気も良く波も静か。 海の水の綺麗なこと。 浜辺にはゴミ一つ落ちていない。 ボートも思っていたより大きく乗り物に弱いうちの奥さんでも大丈夫と一安心。 ボートは途中「割れたリンゴ岩」とかいう何万年前だかにまっ二つに割れた大きな丸い岩を見せてくれたりオットセイの生息するトンガ島に寄ったりしてくれる。

二つに割れた岩は日本だったらさしずめ「桃太郎岩」とでも呼ばれるだろうと思うほど見事に二つに割れている。 オットセイの方は食事時だったのか数が少なく、それでも「折角来てくれたのに誰も居なかったら悪いから」とでもいうようにエキストラで駆り出されたかボランティアで残ったようなのが岩の上で4−5頭眠そうにゴロンと転がっていて、よく見ると泳いでいるのもいる。 外人さんも写真が好きなようで「オオー、オットセイや!」とか叫んで船の中を右往左往してしきりにシャッターを切っている。 こっちはちょっと出遅れて後ろの方から覗いていたら「ここに来い」とおじさんが最前列の場所を譲ってくれた。 皆さん優しい人達でした。


    の後岬の先に向けて進みだしたが全員同じ行程のツアーと思っていたのに途中のビーチに寄っては2人、3人と降ろしていく。 所によってはタラップが浜辺に届かないので腰まであるゴム長の大きなのを履いて水の中をジャブジャブ歩いていく人もいる。 「あれぇ、何故降りていく人がいるの? 皆一緒と違うの? 同じルートのツアーと思てたからユースのおばちゃんに任せっきりで降りる場所もよく確かめてなかったけど何処で降りたらええねんやろ。 あの兄ちゃんはわしらの行程を知ってるのかいな?」とまるで無責任ながら心配になってきた。 それで通りかかった兄ちゃんにユースのおばちゃんが「降りる場所、次に乗る場所」と×印を二つ付けてくれた地図を見せていつもの超簡単英語で「ここでダウンして、ここでまたピックアップ、オーケー?」と尋ねたら人数確認はしているらしく何かのリストを見ながら「オーケー、オーケー、ノープロブレム」と確かに言った。 とまた会話ならぬ会話がここで終っておれば「大丈夫、判っているようや」で安心できたのに、兄ちゃんはすぐに続けて「イフユー ナントカ、テレフォンデ ナントカカントカ」とベラベラとしゃべって行ってしまった。
「えーっ! ノープロブレム言うたのにまた何か言うたで。『ノープロブレムとは思うけどプロブレムがあったら電話でもしろ』というのかいな。 そんな器用な英語がしゃべれたら苦労せんわ。 それにこんな海や山ばっかりの何処に電話なんかあるねん? どうもあの兄ちゃんは口数が多くて人を心配させるでいかんわ」と大阪弁や名古屋弁まで飛び出してブツブツ言っていたらどうやら我々が降りるビーチに着いたみたい。


   こで残っていた全員10人ほどが上陸。「やれやれ、これだけ居るから一緒に付いて行ったらノープロブレムや」と幼稚園の遠足みたいに考えたのが大間違い。 バラバラの参加者のツアーだから当然皆マイペースで他人のことなど構っちゃいない。 我々が浜辺でのんきに写真なんぞを取っていたら皆さっさと浜辺を横切ってウォーキングルートへの登りに向かっている。 慌てて後を追ったが外人さん達は体力があってまた皆足が速い。 ドイツ人老夫婦も太っちょフランス3人組も、ここには負けないだろうと思っていた親子連れも子供は走って登っていくしお母さんも「コラー、チョットマテー!」と追っかけて行ってアッという間に見えなくなって何のことはない我々2人だけが取り残されてしまった。

仕方なく大した登りでもないのにふうふう言いながら登ったら今度は道が右と左に分かれていて標識が一本立っている。 見ると矢印があって「こっちナントカ、あっちナントカ」とマオリ語の地名が書いてある。「わーっ、早速プロブレムや」と慌てて地図を見たが観光用の簡単な地図にはそんな地名は書いていない。「あっちナンバ、こっち梅田やったら判るけどさすがにマオリ語では判らんで」と思ったけど、どちらかに進まないといけない。 先に行った人の声でも聞こえないかと耳をすませたが鳥の声しか聞こえない。「ええい、しゃあない。 ボートの進んで来た方向からして左の道やろ。 左に行こ」と決めたものの「若し方向が反対やったら、行方不明2人ということで片付けられて置き去りにされるのやろか」と一抹の不安を抱きながら歩き出した。

  


    は海沿いの山(丘くらいか?)の中腹を巻いて進む林の中の道で良く整備されていて歩き易い。 途中2〜3ヶ所の沢があってそこでは沢に下っては中腹まで登るということを繰り返したが大した登りではない。 時々林の切れ間から見える海は浅い湾はエメラルドグリーンに光り、その向こうの海は明るいブルーから濃いブルーへとグラデーションを見せてキラキラと輝いて本当に美しい。「わあー、きれいやなあ!」としばし置き去りの不安も忘れて景色に見とれたりして歩くこと2時間半。 途中、前から来る人、後から追い抜いていく人も居てツアールートがいろいろあることも判ったが、結局我々のルートとしてはこの方角が正しかったようで途中ユースで自炊して作った昼食のおにぎりを食べて急な坂を下ったら浜辺で先着組がのんびりと寛いでいて、例の子供もまだまだ元気に浜辺を駆け回っていて「何や、えらい遅いなあ」という顔つきで我々を見ていました。

  

  

その浜辺でしばらくうろうろしていたら迎えのボートが来て乗船したら30分程で出発点カイテリテリに戻りまた同じバスで各々のホテルまで送ってもらって1日のツアーは終了。


    員がバスに乗った処で兄ちゃんが乗客の確認をしたんだけど「ブルースさん、ピーターソンさん」と呼んで次に「名前の発音の難しい人」と呼んだので、朝のことがあったから多分私のことだろうと思って「ハーイ」と手を上げたら皆が「ワッハッハッ」と笑っていた。 朝、ちゃんと名前を教えてやったのにアンタのお陰で最後まで笑いものになったやないか、コノヤロメ! でも陽気でよく動く親切な若者でした。 こっちが言葉が判らないことを棚に上げていろいろ文句を言ってゴメンなさい。(もっとも本人はそんな文句を言われているとは知らない筈だけど)。 最初ボートに乗る前も多分「9時にボートが海の方から来るから、それまであそこにカフェがあるからお茶でも飲んで待ってなさい。 トイレは向こうにあるよ」と言ってあちこち指差していたのかも知れないし、ボートの中でも「ピックアップは大丈夫だからウォーキングを楽しんで下さい」と言ってくれていたんだろうと思う。(「テレフォンデナントカ」は今もって意味不明だが、こっちの聞き間違いかな)。 お陰で思い出に残るツアーを楽しめました。 ありがとう。 もう一度「サンキュー」です。  

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