台中通信2015

2015年
神原克収

目次


1.中秋節 2.学生との交流会
3.財布紛失騒動記 4.日本人技師の顕彰
5.財布紛失騒動記2  6.映画「湾生回家」を見た
   
   
   
   


1.中秋節
 台湾には三大節季がある。春節(旧正月)、端午節(6月)、中秋節(9月)である。
 中秋節の元々の趣旨は霊界の門が開き霊魂が下界を徘徊するため、その霊を慰めるのが旨である。しかし現在では家族団らんの日で、月餅を贈り合い、柚子(文旦)を食べる習慣がある。近年台湾独特の習慣で BBQ を家族で楽しむのが盛んに行われている。
 スーパーやお店では9月に入ると月餅と文旦がヤマのように積まれている。私も月餅や文旦を数人の人からプレゼントされた。
 中秋節は明日(9/27)だが、今日(9/26)夜はあちこちの家の前で家族や友人と BBQ を囲んでいる姿が目に付く。断って写真を撮り BBQ の中身を覗き込んでいると、あれを食べろ、これを飲めと色々なものを勧めてくれる。食事後だったので2ヵ所で少しだけご馳走になったが、次回からは食事をせずに仲間に入れてもらい、台湾の人と一緒に中秋節を祝いたいものだ。

街の至る所で BBQ を楽しんでいる

覗いていたら飲食を勧めてくれる                   頂いた月餅と柚子(文旦)の一部

2.学生との交流会
 振英会館の従業員の詹さん(舞ちゃん)は静宜大学の卒業で、彼女の呼び掛けで学生と日本人ロングステイヤーとの交流会が実現した。会場は振英会館の集会室。
 学生は15名(全員日本語が出来る)、日本人は22名が参加しスタートしたが、年齢は祖父母と孫くらいの開きがあり、学生は緊張感一杯の雰囲気であった。
 全員の自己紹介も全て日本語でこなし、振英会館用意のケーキと飲み物を頂きながらテーブル単位で懇談し大いに交流に花が咲いた。
 その後折紙講習に入り、独楽と鶴を折ったが学生たちの呑み込みは早く、出来上がった独楽を廻したり、鶴の羽をバタつかせたりと大はしゃぎ。最初は日本人が先生役を務めていたが、途中から日本人を指導する学生も出てくる始末。
 続いて日本の歌「翼を下さい」をTさんの主導で歌唱指導をした。2回くらい歌うとほぼ全員が歌えるようになり、このころには学生の緊張感もかなりほぐれてきた。
 そのあとMさん、Oさんの指導でフォークダンスをしたり、全員が輪になり手をつないで「里の秋」「四季の歌」を歌って一体感が一気に増した。
 日本の大学で教鞭を取っていたNさんからの「日本への留学」についてのガイダンスには学生の目が輝いて、憧れの日本留学に思いを馳せていた。
 最後は全員での質疑応答。学生からは「日本人は何故漬物が好きなのか?」とか、「台湾人は臭豆腐の匂いは気にならないのか?」、「台湾人は何故日本が好きなのか?」などの質問が飛び交い、まともな回答に珍回答、迷回答も飛び出し笑いの中でお開きとなった。
 今までにも学生との交流会は行ったことはあるが、全てお膳立てされたものであった。
今回は全く筋書なしのぶっつけ本番での交流会で、結果が気になったが終わってみれば良かった、良かったの感想で、次回も是非参加したいとの声に気を良くした一日であった。

折紙交流風景

振英会館用意のケーキと飲み物

 
 全員で「里の秋」合唱

3.財布紛失騒動記
  参加者の1人Uさんご夫妻が伝統市場(通称:黄昏市場)へ買い物に出掛けた。買い物を済ませて宿舎の振英会館に帰着し、財布がないことに気付いた。そしてその顛末を振英会館のスタッフ(舞ちゃん、デニスさん)に話した。二人はすぐ行動を起こしてくれ警察に紛失届を出してくれた。
 Uさん夫妻は部屋に帰り財布の中身(クレジットカード、運転免許証等々)の事後処理に頭を巡らせる一方、財布を落とした場所の特定をし、そこへ行ってみようと出掛ける積りでフロントに降りた。そしたらデニスさんが「いま警察から【財布が見つかり管理事務所で保管している】と連絡があり、舞ちゃんが受け取りに行っている」とのこと。暫く後に舞ちゃんが戻り、中身を確認すると全く手つかずで戻ってきたことが判明し、めでたし・めでたし。
 Uさんご夫妻の感激は相当なもので、すぐさま世話役の私に連絡を頂いた。振英会館スタッフは総入れ替えになって少々不安もあったが、日に日に慣れてきて業務がスムーズに運びだした矢先にこの親切な対応、《もてなしの心》さえあれば経験のなさはカバー出来ると安堵するとともに、改めて台湾の方々の親切を肌で感じた出来事であった。

昼間勤務の振英会館のスタッフ              上段左:舞ちゃん(詹さん)  右:曽さん
 下段左:デニスさん  右:陳さん                   それ以外に黄さんがいる


4.日本人技師の顕彰
 台湾では日本統治時代(1895-1945)台湾に貢献した多くの日本人が今でも尊敬されている。
その一人に磯田謙雄技師がいる。台湾中部の白冷洲ダムを造ったことで知られている。
(磯田氏の業績については下記URLでご確認下さい)
 ダムが通水した10月に磯田氏を顕彰する式典が毎年開かれている。今年は「白冷洲文化節」初日の昨日その式典があり、招かれてロングステイヤー15人で参加した。
 台中市長など地元の名士が多数出席し、日本の金沢からも10名ほどの代表団が参列していた。磯田技師の一人娘(松任谷さん)も家族とともに車いすで参加して挨拶し、喝采を浴びていた。我々15人も来賓扱いで歓待され記念品の帽子や饅頭を頂戴し、簡単ながら昼食も振る舞われた。
 外国人である日本人を顕彰する式典がこれほどまでに盛大に行われることに驚きと感謝の念を禁じ得ない。こうした事実を日本人にもっと知って欲しいと切に願う次第である。
 磯田技師に限らず日本統治時代に功績を残した多くの日本人が今でも地元民に愛され、銅像が立てられたり、毎年慰霊祭が行われたりしている。ダム関係では特に次の3人が今でも尊敬を集めている。
 
二峰洲地下ダム(屏東縣)の鳥居信平
http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogdb_h23/jog698.html
烏山頭ダムの八田與一
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AB%E7%94%B0%E8%88%87%E4%B8%80
白冷洲ダムの磯田謙雄
http://blogs.yahoo.co.jp/obara1999/61512782.html
http://japan.cna.com.tw/news/asoc/201310160006.aspx
※興味深いのはこの3人がいずれも旧四高(金沢)の先輩・後輩ということである。

式典風景、中央の車いすが磯田氏長女、右:台中市長、左:金沢市議

式典開始前に白冷洲を世界遺産に登録のための署名をした 神輿・獅子舞も出て賑やか

 
挨拶する磯田技師の長女               胸像の除幕式も行われた(銅像は既に記念公園にある)

 
 参加記念頂いた帽子とお祝い饅頭

5.財布紛失騒動記2
 前回市場での財布紛失についてごほうこくしましたが、今度はタクシーに財布を忘れた話です。
 T氏夫妻と台湾人Yさんと我々夫婦5人で和食店「吉祥屋」に出掛けた。この店はノーベル賞授賞式に使われる日本酒「福寿」を置いている店で、そのお酒を目当てに行った。
 久し振りに本物の美味しい日本酒を味わったが、料理も頗る味がよく、値段も内容からするとリーズナブルで大満足であった。タクシーを呼んでもらい店をあとにした。無事ホテル近くのスターバックスに帰着したが、T氏が「財布をタクシーに忘れたようだ」と言い出した。すぐさまYさんが吉祥屋に電話してタクシー会社に問合せてくれ、無事見つかった。
 その後がいかにも台湾らしい。吉祥屋の女将がタクシー会社にとりに行き、その足で我々がお茶をしているスタバに届けてくれた。何とも素早い行動でタクシーを降りて30分も経たない間の出来事であった。初めて訪れた客でしかも日本人、次いつ来るか判らない客に「ここまでやるか」と感心した。
 食事中に「来月からのロングステイグループ(34名)の食事会をここでしてもいいかなぁ」と考えていたが、今回の鮮やかなフォローを見て、「よし、ここでやろう」と決心した次第。

※吉祥屋は結構大きな店で来年台中の目抜き通りに5階建てのビルを新築して店を移転する繁盛ぶり。この女将の
 気配りこそがこの店の売りなのであろう。

吉祥屋の外観

女将と来年移転する店の模型                 台湾でも福寿が飲める

6.映画「湾生回家」を見た
 台湾の花蓮で映画「湾生回家」を見た。湾生とは台湾生まれの日本人が敗戦で日本に引き揚げた人たちのことである。この映画の主人公は花蓮生れで映画は主として花蓮で撮影されている。
 私は偶然にも昨日と一昨日の2日間、この映画に出てくる花蓮に残る日本人の足跡を辿ったばかりで、二日前に見た風景が次々と現れ、実に感慨深い思いでこの映画を見た。
 映画は湾生達が故郷「台湾」への想いを切々と訴える内容がドキュメンタリータッチで描かれている。彼等の故郷「台湾」への想いは我々の想像をはるかに超えるもので、涙なくしては見ることは出来なかった。
 私の周辺には満州を含む中国からの引揚者が何人かいるが、彼等から湾生のように強烈に「故郷・中国」を語る人を見たことはない。(私の不勉強が原因なのかも知れないが・・・)
 この感動を皆さんに伝えることは私の文章力では到底出来ない。皆さんが直接この映画をご覧になられることを切に希望します。
※日本でも近々「湾生帰郷物語」という題名で上映されるそうです。
※ネットに沢山の関連記事があります。
https://www.youtube.com/watch?v=ii_AgiBRcnQ(7分間予告編)
https://www.facebook.com/film.wansei/posts/585305208225663(作者が思いを語っている)
http://www.taiwannohannou.com/archives/15192424.html(映画を見た台湾人の反応ブログ)













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