マレーシア文学紀行
キャメロン・ハイランド
『失踪ーマレー山中に消えたタイ・シルク王』ウイリアム・ウォーレン著。これは、英語版だが吉川勇一翻訳本も発刊されている。
   ジム・トンプソンは、この密林の奥に消えた。今、キャメロン・ハイランドでは、1〜14のトレイル番号が付けられたトレッキングコースが整備されている。
 ストロベリー・リゾートの部屋からメロン高原を望むことが出来る。
 日、マレーシアの警察が本部を置いた、タナー・ラタの街並み。  小説のクライマックスの舞台となったサンポー(三寶萬)寺院。
 この小説の、背景に日本軍のマレー・シンガポール作戦が隠されている。太平洋戦争の始まりは、海軍によるハワイ島攻撃と多くの日本人は信じ込まされているが、真実は陸軍による「コナ・キタバル攻撃」が海軍がハワイ攻撃する3時間前からコタ・バルで始まっていた。
 日本軍は、最初は奇襲攻撃のためもあり優位に戦闘を進めていたが、2月はじめからのジョホール渡過作戦以降、苦戦状態になった。

 それにしても、キャメロン・ハイランドの紅茶畑が静岡の茶職人により再建されたという発想はおもしろい。
 松本清張は、占領時の日本を闇から支配してきたのはGHG(占領軍総司令室)であり、占領後はCIAが引き継いできたことをいろいろな小説で描いてきた。
  『日本の黒い霧』を貫くテーマは紛れもなく「占領期日本におけるGHQ(占領軍総司令部)の謀略」である。「下山国鉄総裁謀殺論」では、国鉄三大事件の一つである下山事件 の背景にはそれをしくんだ GHQの占領政策と謀略が存在したことが明らかにしている。
 この追求の過程は良くできた推理小説のようにスリリングなのだが、本書の最大の魅力は、政治権力というものの恐ろしさを肌身に感じさせてくれることだろう。
 本作品は、直接にはCIAの影は出てこないが、ジム・トンプソンの失踪事件そのものにはCIAの影が常に付きまとっている

『熱い絹』 松本清張著

  
自然の密室マレーシアのキャメロン・ハイランドから忽然と消えたタイ・シルク王ジェームズ・ウイルバー。はたして事故か拉致されたのか、あるいは失踪か?
 1967年に起きた、この謎の事件に推理作家松本清張が挑んだ社会派ミステリー小説。
 小説は、日本の軽井沢の殺人事件より始まる。殺された女性は、ミス・ウイルバー。数日前に、キャメロン・ハイランドから忽然と消えたジェームス・ウイルバーの妹である。日本の警察は、マレーシアとの事件と関係があるとにらみ、マレーシアに乗り込み、合同で調査を始める。
 両警察が事件を追ううちに、次々と関係者が殺されていく。はたして犯人の目的は何なのか。和服の図案家山形佐一と、骨董屋の女店員下沢ヒロ子とのロマンスを絡めて描かれた1988年の作品。

 
 この事件は、ベトナム戦争と深い関係があると言われている。
当時、アメリカはベトナム戦争に深くはまり込んでいた。アメリカ軍の戦死者も増加する一方であった。ジョンソン大統領は、北ベトナムへの空爆を強めていた。
 が、南ベトナム北部の戦局の指導権は共産軍に握られていた。ジム・トンプソンはCIAと関係が深く、共産軍から狙われていた。
 「ストロベリー・リゾート」のジム・トンプソンテラスから「月光莊」を望む。向こうの山の頂上に見える。ここの名物は、アフターヌーンティー。スコーンと紅茶のセット。
 下写真は月光莊(小説では南十字莊)。現在はレンタルハウスになっている。

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(十河和夫 記)