ニュージーランドの学生

2007年10月〜11月日

松木 勉・和子


   ュージーランド旅行中の昨年10月、30日/31日とウェリントンのユースホステルに泊まった。 自炊の夕食をつくるべく家内と共同キッチンに行ったら3〜4人の女性がひき肉の山と格闘している。 其々がひき肉をフライパンで炒めてはコンロにかけた大鍋に放り込んでいる。 そのため数少ないガスコンロが塞がれて我々の調理ができない。 女性たちは我々にすまなさそうな顔をしているが作業は続きコンロは塞がったまま。 一体何をしているのだろうと思っていたら大鍋の中にはトマトピューレが入っていてそれに炒めたひき肉を放り込んで大量のミートソースを作っているらしい。 何故3〜4人であんな大量のミートソースを作っているのだろうと不思議に思っていたらやがて事情が判った。

漸く空いたガスコンロを使って我々の晩ご飯を作りテーブルに座って食事をしていたら小学校の高学年かと思われる男女の子供がゾロゾロと食堂に入ってきた。 その数50−60人ほどが皆手に手にお皿を持っている。 どうやら先ほどの女の人達は学校の先生で生徒達の夕食を作っていたらしい。

見てると生徒が一列に並んで最初の先生が皿にクラッカーを載せ次の先生が例のミートソースをかけ、次にサラダを盛る先生の前を通ってパンを取ってと全部を載せてもらった生徒が順次テーブルに着いていく。 全員が着席した処で男の先生が何か言って食事が始まった。 我々の横に立っていた女の先生が「うるさくてごめんなさい」と謝っていたが全く気にならないほど行儀良く食べていた。

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YHAのキッチン YHAの食堂


   朝今度は朝食で一緒だった。 食パンとハムとチーズと牛乳。 流石に朝は手が回らないのだろうと思っていたら違った。 朝食が終ったら其々が色んなプラスチック容器を持ち出してこれにお弁当用の丸いパン2個とマヨネーズをかけた野菜サラダやリンゴを貰っている。 野菜サラダは先生達が朝早くから起きて作ったものらしい。 その日の午後この子供達と「テパパ」というウエリントンの国立博物館で一緒になったので「あれ、もう一日ユースに居るのかな」と思ったらやはりその日もユースに泊まっていて先生達は今度は大量のハンバーグを必死で焼いていた。 さすがにハンバーグは冷凍品だったけど、一列に並んだ子供達に先生がパンを切ってハンバーグを挟んでポテトフライを付けて、その時に其々の先生が一人一人の子供の名前を呼んでは何か言って、子供もニコニコと答えながら受取ってワイワイガヤガヤ食べてました。 先生達が三食手作りしてお互いのコミュニケーションが十分にできて、こんな学校にはガキ大将はいてもいじめっ子はいないんだろうなあと何かほのぼのとしたものを感じながら見ていました。

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YHAの食料品置き場 YHAの冷蔵庫


   度は11月2日にクライストチャーチにあるモナベールに行った時のこと。 この庭園の入口の前にクライストチャーチ女子高校がある。 丁度昼休み時で広い芝生の校庭に大勢の女生徒が思い思いに座ったり寝転んだり中にはスカートを挟み込んで逆立ちをしたりしてる子もいて全くのんびりとした雰囲気。 そんな様子を横目にモナベールに入ってきれいな庭を巡っていたら奥の方からエッサホイサという感じで高校生らしき男の子が10数人走り出してきた。 ランニングでもしているのかと思ったら様子が変で、遠目で見てもどうやら下着のパンツ一枚の裸らしい。 これがひとかたまりで女子高の校庭に走り込んで行った途端、校庭から「ワーワー、キャーキャー」という叫びや悲鳴が聞こえてきたと思ったら男の子達が一団になってエッサホイサという感じで戻ってきた。

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襲撃終了 Tバックも走る(左)

何事が起こったのか訳が判らないまま10分ほどしてもう帰ろうかと入口の方にやってきたら、またまた男の子達が庭園の奥から走り出してきた。 今度は目の前を走って来たのではっきりと見えたが皆パンツ一丁の裸で手に手に水の入った風船を持っている。 中には弾薬係なのか水風船の入った箱を抱えて走っている子もいる。 一人の男の子は我々観光客の前を通る時わざとパンツを下げて下の赤いTバックを見せてくれた。 これには観光客一同大笑い。 男の子達は校庭になだれ込んで女の子達に向かって水風船を投げている。 それで女生徒達がワーワー、キャーキャー言っていた理由が判った。


   としきり投げ終わるとエッサホイサで戻りかけたが今度は前と違った。 女子高の門から教頭先生くらいの中年の女性が飛び出して来た。 これを見て男の子達が「ワッ!」という感じで一目散に逃げ出した。 女の先生は走りかけたのだけど我々観光客が居るのを見て走るのははしたないと思ったのか速足で怖い顔をして追っかけている。 その後ろにもう一人若い女の先生が付いてきたのだけど、こちらは男の子達のいたずらが面白くて仕方ないけど教頭先生の手前笑うわけにはいかないからと必死で笑いをこらえているという表情で、でも目が笑っていた。

今度はモナベールを出て女子高の正門をハグレー公園の方に歩いていたら5−6人の別のグループが校庭から走り出してきた。 このグループは大きな水鉄砲を持っていて敵中を縦断してきたらしいが後ろに向かって何か叫んでいる。 見てると1人の男の子が逃げ遅れて女の子に捕まったのかパンツを破られて半分お尻を出した危うい姿で駆けてきた。 そのお尻を見て女の子も男の子もキャーキャー笑っている。 その子を収容した一団はまたエッサホイサで走り去っていった。


   れはどうやら「end-of-year Grundy run」といって、卒業前に男子の学生が女子大や女子高へパンツ一丁で押しかけて校内を駆け抜けるという恒例の伝統行事らしい。 水を掛けるということまで許されているのかどうか判らないが女の子の方も十分に楽しみにしているようで、その証拠に今年クライストチャーチ近郊の女子大がこの行事を禁止して門を閉めたので男の子達が走り抜けを止めたところ逆に女子大生達が男子校に押しかけて(こっちは裸で行ったわけではないらしいが)「門を閉められただけで来ないなんてこの意気地なし! あんた達が来ないから今年はこっちが来てやったぜ」という張り紙と自分達の下着を男子校の門にぶら下げて帰ってきたと新聞に記事と一緒に下着の写真も載ってました。

モナベールといえばビクトリア様式の個人庭園を一般に開放した世界中の観光客もやってくる有名な観光スポットでそこでパンツ姿の高校生が走っていたら、日本だったらすぐにガードマンが飛んでくるところでしょうが、ここには門番もガードマンも居ませんし、周りの人もニコニコ笑って見てました。 この2つの出来事を見て何となくニュージーランドの学校や生徒だけでなくニュージーランド人全体の大らかさみたいなものを感じた次第でした。  

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